美容医療カウンセラーの「怪しい立ち位置」?
〜令和7年8月15日 厚労省通知「医政発0815第21号」解説〜
はじめに
このブログは、**令和7年8月15日に厚生労働省から出された通知(医政発0815第21号「美容医療に関する取扱いについて」)**をもとに、美容医療の現場で問題になりやすい「カウンセラーの役割」について、法律初心者の先生方にもわかりやすく解説するものです。
近年、自由診療の美容医療において、医師ではない「カウンセラー」と称するスタッフが、患者への説明や治療方針決定を担っているケースが増えています。
しかし、厚労省はこの通知で「無資格者が医学的判断を行うことは医師法第17条違反の可能性がある」と明確に指摘しました。
第1章 なぜこの通知が出されたのか?
今回の通知は、**「美容医療の適切な実施に関する検討会」報告書(令和6年11月22日取りまとめ)**の内容を踏まえたものです。
報告書では、次のような問題が指摘されていました。
- 患者が医師ではなくカウンセラーのみと相談して治療内容を決定している
- 保健所が立入検査や指導を行う際に、どの行為が違法なのか判断基準が曖昧
- 無資格者による施術・説明・判断が、結果的に医師法違反につながるおそれ
これらを受け、厚労省は「どの範囲が医業にあたるのか」を整理し、各自治体に周知を求める形で通知を出したのです。
第2章 カウンセラーがやってはいけないこと
通知の中で、特に強調されているのが以下の点です。
(1)医学的判断を伴う説明・提案はNG
患者の希望(例:「二重にしたい」「ダウンタイムを短くしたい」など)を聞いた上で、
「それなら切開法がいいですよ」「ヒアルロン酸よりボトックスが合います」
といった治療法を提案・決定する行為は、医学的判断を伴うため、医師法第17条違反となります。
たとえ料金説明の体裁をとっていても、患者の状態に応じた医学的判断をしている場合は「医行為」にあたると明記されています。
(2)「名称」を変えても違法は違法
アートメイクやHIFU(ハイフ)などの行為を、「○○メイク」「○○タトゥー」などと別名で提供しても、
実質的に皮膚に色素を入れる・組織に影響を与えるものであれば医行為です。
したがって、無資格者がこれらを行うと医師法違反になります。
(3)メール・チャットだけの診察・処方も注意
オンライン診療のルールに反し、文字や写真のやり取りだけで診断や処方を行うと、
医師法第20条の「無診察治療の禁止」に抵触するおそれがあります。
オンライン診療は、リアルタイムのビデオ通話などで十分な視覚・聴覚情報を得ることが前提です。
第3章 医師と看護師の指示関係にも注意
通知では、看護師・准看護師などの有資格者による施術でも、
医師の指示がないまま脱毛・アートメイク・HIFUを行えば保助看法第37条違反になると指摘されています。
また、医師がこうした違法状態を「黙認」した場合、
医師自身も管理責任を問われる可能性があります。
「看護師がやっているから大丈夫」と思って任せている場合も、今一度運用体制を見直す必要があります。
まとめ ―「医療」と「接客」の線引きを意識して
今回の通知は、美容医療業界における「曖昧なグレーゾーン」を明確化したものです。
とくに、
- カウンセラーによる医学的判断や提案
- 医師不在でのカウンセリングや施術
- メール・チャット診療の乱用
これらは法的リスクが高い領域として改めて示されました。
✅ 法規に基づいた運用をしているか、不安な先生へ
カウンセラーの業務範囲、同意取得の手順、説明資料の内容など、
「現場のやり方が本当に通知に合っているか分からない」という声を多く伺います。
当事務所では、
- 美容医療に関する法規チェック
- カウンセラー業務フローの監修
- 医療広告規制(薬機法・景表法)対応
など、医療機関の運営支援を行っています。
法規に基づいた正しい体制づくりに不安がある方は、ぜひ一度ご相談ください。
📅 このブログは令和7年8月15日付「医政発0815第21号」厚生労働省通知の内容に基づいて作成しています。
法令や運用は今後変更される可能性があります。最新情報を踏まえた対応を心がけましょう
